夏季研修会 講演 
「楽しい学校生活を送るためのアンケート
       「Q−U」についての講義・演習等」
講師:秋田市立将軍野中学校 教諭 阿部千春先生
「Q−U」とは
河村茂雄先生(都留文科大学)が開発した学級診断尺度で、学級不適応から不登校に至りそうな子どもの発見や予防、構成的グループ・エンカウンターの効果測定などに活用できるものである。
「Questionnaire−Utilities」の略であり、同時に「級友」という意味でもある。

「アンケートQーUの概要」
(1)『学究生活度尺度(いごこちのよいクラスにするためのアンケート)』今回はこちらを研修
「自分が居場所があり周りからも認められていると感じるか(承認)」ということや、「自分に居場所がない、誰からもみとめられていない、あるいはいじめ被害にあっているか(被侵害)」ということなどについての各質問を5段階評価で答えさせ、集団の中における個人の生活についての満足度を明らかにするための調査である。
(2)『学校生活意欲尺度(やる気のあるクラスをつくるためのアンケート)』
「友人との関係」「学習意欲」「教師との関係」「部活との関係」「学級との関係」「進路意識」の6つの観点(小学校は「部活との関係」をのぞく5つの観点)に分けて、その望ましさを明らかにするものである。

『Q−∪学級生活満足度尺度』の集計のしかた <中学校用の場合>
  質問@〜Iの合計点を「承認得点」としてY軸にとる。 ⇒「学級での認められ意識」
  質問J〜Sの合計点を「被侵害得点」として]軸にとる。⇒「いじめ被害などの意識」
  2つの得点が交差する位置に該当する生徒の出席番号をプロットする。生徒が4群の
  どのタイプか集計表に表記する。

◆Q−Uのおすすめポイント◆
@短時間でできます。(アンケートは15分程度でできます。)
A集計が楽です。(空き時間1時間でデータ処理が終わります。)
B教師同士で見せ合えます。
C教師の名人芸について、フォーマルな場で言い合えます。さまざまなレパート
 リーが話される中から、自分にピッタリくるものをチョイスすればよいのです。

『Q−∪学級生活満足度尺度』の解釈のしかた
(1)個々の生徒の理解について
 @「学級生活満足群」の子ども
   子どもは学級内に自分の居場所があり、自分の価値を認められていると思っている。
   学習能力が高く、高い学習成果をあげており、学校行事に積極的に取り組み、学級
  ・学年のリーダーとして活躍することが多い。自分の気持ちや考えを的確に表現でき、
  明るく社交的な子どもが多い。
 A「非承認群」の子ども
   子どもは学級に居場所がない、自分の価値が認められていないと思っている。実際
  に、学校で認められることが少なく、自主的に活動することも少ない。
   学習能力は高いが、グループ学習などにはあまり生かされないことが多い。自分の
  気持ちや考えを、素直に的確に表現することが苦手であり、他の子どもとの交流がス
  ムーズにできないために誤解が生じやすいことが多い。
 B「侵害行為認知群」の子ども
   子どもは自分を価値のある存在と思っているが、友だちとのトラブルがあり、いや
  な思いをすることがあるとも思っている。自分の興味関心のあることには意欲的に関
  わるが、その関わり方に友だちの心情への配慮がなく、自己中心的な面がみられる子
  どもである。
 C「学級生活不満足群」の子ども
   子どもは、学級に居場所がなく、友だちから認められていないと感じている。また、
  さまざまな場面でいやな思いをすると思っている。学校がおもしろくない、つまらな
  いという思いが強い。いじめや悪ふざけを受けている可能性が高い子どもや、非常に
  不安傾向の強い子どもである。不登校に至る可能性が高い。この領域にいる生徒につ
  いては個別の指導を必要とする。

(2)学級集団の状態の理解について
 @学級生活満足群型
  ・多くの子どもが学級生活に満足している学級である。また、不満を感じている子ども
  が少なく、望ましい学級状態といえる。教育活動がスムーズに行われ、その効果も高
  い。
 A非承認群型
  ・子どもの間にトラブルは少なく、一見まとまったクラスにみえるが、それは学級で子
   ども一人一人が自分の個性や自己表現をする機会が少ないという側面をもっているか
   らである。
  ・子ども同士の人間関係の形成が不十分で、みんなが協力して何かをやろうという意欲
   に欠ける面がある。
  ・いじめられているというほどのことはないが、学校がつまらない、自分は誰にも認め
   られていないと感じている生徒が入っている。
  ・教師に管理的な厳しさがあり、子どもたちが萎縮している面が考えられる。それを教
   師の側から見ると、「このクラスにはいい子が多いが、意欲のある子どもが少ない」
   という具合に感じられる。
 B侵害行為認知群型
  ・子どもたちの活動意欲は高いのだが、子どもの間の友だち関係が希薄で、トラブルも
   多くなっている。
  ・学校や他に対して不満やストレスをもっているが、自分がやりたいようにやることで
   自我を保っている。
  ・集団として生活していくための、基本的な学級のルールが確立していないことが考え
   られ、悪ふざけやいじめを受けていると感じている生徒が多い。
  ・インフォーマルリーダー(私的リーダー)がいることがある。
 C学級生活不満足群型
  ・教師の実践方法や対応が、子どもの心情面とマッチせず、欲求不満な子どもが多く、
   そのため陰湿ないじめなどが発生しやすい状態が考えられる。
  ・学級生活の基本的なルールなどが子どもから無視され始め、学級集団は烏合の衆の
   ような様相を呈してくる。日々の授業の成立も難しくなってくる。
  ・子どもの間にはぎすぎすした面が増え、トラブルや小グループ同士の対立などが絶
   えなくなる。
  ・過剰適応の生徒(優等生・クラスの中心)がこの領域に入っていることがあり、観
   察とのずれを意識しながら慎重にあたっていく必要がある。
  ・この領域に影響力のある生徒が入っている場合、同じ群の者を引き込んでマイナス
   の勢力をつくることがあるので注意が必要である。

楽しい学校生活を送るために
(1)望ましい学級集団とは
・ルールがあること・‥‥・対人関係や集団の規範
・リレーションがあること‥‥‥親和的な本音の感情交流、役割交流
・ルールとリレーションのバランス
 ふれあいのある人間関係を形成するために、学級のルールの確立は不可欠となる。ル
ールとしては、「コミュニケーションルールがあるかどうか」ということが大切である。
ふれあいのある人間関係を形成するにも、「自分は強く傷つけられない」「他者から受
け入れてもらえる」という思いがなければ、自分を開いて振る舞うことはできない。そ
のためにも、「人が話したら最後まで聞く」「相手が真面目な話をしたらチヤカさない」
など、子どもたちが共有するルールやマナーを身につけさせる必要がある。
 ルールとリレーションは同時に存在する。ルールのあるところでは、人間関係づくり
のきっかけが生まれ、そして、リレーションが高まっていく。



(2)教師の指導と援助
・指導・‥・‥ルールの定着に必要
・援助・‥・‥リレーションの定着に必要
・指導と援助のバランス‥‥‥指導と援助を、子どもに抵抗なく受け入れられるように
                  対応する。

                           以上当日のレジュメより 一部担当補筆


*当日は演習なども行われました。また、具体的な実施の仕方なども示されましたが、ここでは省略します。
 興味を持たれた方は、阿部先生の示された以下の参考文献やホームページを参考になさってください。

参考文献
「Q−Uによる学級経営コンサルテーション・ガイド」  河村茂雄編集   2000年 図書文化
↑一見注文できそうに見えますが、絶版だそうです。

「Q−Uによる学級経営スーパーバイズ・ガイド」    河村茂雄他編集  2004年 図書文化
  小学校編 中学校編 高校編

「グループ体験によるタイプ別!学級育成プログラム」 河村茂雄編著   2001年 図書文化
  小学校編 中学校編

ホームページの紹介
「Q−U学習会」(岩手・苅間澤勇人先生代表)
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