☆研究テーマについて
『目を輝かせて 取り組む生活科』
〜人や自然とのふれあいを通して
ともに学び合う子ども〜
を研究テーマに「教師自らの体験や活動を重視したすぐに役立つ研修」「自分のために自分たちで作る研修」を方針に、個々の実践を大切にして研修を進めています。
☆会報どんぐり
再考「生活科の基礎・基本」
「学力向上」と「基礎・基本の定暮」への流れ
10月7日、中教審より「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」の答申が出された。今回の答申では、学習指導要領に明示されている共通に指導すべき内容を確実に指導した上で、子供の実態をふまえ、明示されていない内容を加えて指導することも可能という性格を明確にしたものである。
昨年度の新指導要領の実施、学校週五日制のスタートで児童生徒の「学力低下」が一斉に沸きあがり、文科省も「基礎・基本」の確実な定着と「指導要領の歯止め事項の撤廃」で学力向上のいっそうの推進を打ち出した。そしてこうした方向は、県の学習状況調査結果へ対策・対応など、私たちを取り巻く状況においても水面に落とされた一滴の波紋のごとく、現場を静かに揺れ動かしている。そして、この波紋は、「新しい学力」として登場した生活科や総合的な学習の基礎学力向上の論議に進むことも間違いない。
生活科の学力向上と基礎・基本
秋も深まって、公園にも落ち葉がたくさん。木の実も豊富になってきた。さあ、1、2年の担任の先生方は、どんな生活科を展開させていくだろうか?
「そろそろ公園に、連れて行きたい…」
「連れて行って秋探しをさせたい」
「秋の季節感を感じさせたい…」
「木の実や落ち葉で何か作品を作らせたい…」
こんな「教師の思い」を子供たちにどのように働きかけるのだろう。
私は、ここが「生活科の基礎・基本の徹底」の最初の分かれ目であると考えている。
各校には独自の年間指導計画が準備され、その計画に従って、生活科の授業も実践されている。ともすると、その計画を「こなす」ことに追われていないだろうか。内容をこなすことが、基礎・基本の充実ではないことは、他の教科等にも通じることである。特に生活科では、教科の特質からみても「内容」以上に「指導上の留意点」が大きな意味を持つように思うのである。
「きっかけづくり」を確実に
その中でも、活動の「きっかけづくり」の配慮が特に重要だろう。「公園にいってみない」と教師の願いをそのまま子供たちに投げかけ、それが子供たちたち全員の願いに高まったのであればそれでもいい。あるいは、例えば、木の実や落ち葉を拾ってきて見せてくれた子供を生かして、「○○さんが公園でこんなものを探してきてくれました。」と投げかけたなら、「私も見つけたい」「それでぼくコマつくれるよ」ときっと反応が返ってくる。それをみんなに広げたなら、たちまち「公園へ行こう」コールが湧き上がるに違いない。自ら望んだ学習、希望がかなえられた(実はその裏にはしっかり教師の願いがあるが…)と感じてスタートする活動では、子供たちの意欲が違ってくる。こんな些細なきっかけづくりも、児童主体の学習作りには絶対欠かせない。
「知的な気づき」は「こだわり」と「没頭」から
今回の生活科の改訂では、「知的な気づき」の一層の重視がポイントに挙げられている。「知的な気づき」をどうやって気づかせるのか?「教える」ことはもちろん「気づかせる」ために何かを「体験・活動させる」指導はやはりそぐわないだろう。
子供たちの活動へのきっかけづくりや子供たちの思いや願いの吸い上げに最大限に心を配り、子供たち一人一人がそれぞれの「こだわり」をもって「没頭」できる活動を演出していく。あたかも子供たちが自ら創り出した活動の如く。そんな活動や体験からは、自ずと「知的な気づき」が沸き起こってくる。
こんな活動や体験を子供と楽しめる教師は、「生活科の基礎・基本」が、間違いなく子供たちに定着していくのだと思うのだが‥・。いかがだろう?
(第26号より 副会長あいさつ)
☆平成14年度の主な活動
4月25日 |
第12回生活科研究会総会 会員93人でスタート |
9月17日 |
会報「どんぐり」23号発行 |
10月 4日 |
太田町立太田北小学校で研究大会開催 |
12月17日 |
会報「どんぐり」24号発行 |
☆平成15年度の主な活動
4月24日 |
第13回生活科研究会総会 会員92人でスタート |
7月 9日 |
会報「どんぐり」25号発行 |
8月 4日 |
夏季研修会 |
12月17日 |
会報「どんぐり」26号発行 |
☆平成14年研究大会より
10月4日に、太田町立太田北小学校で研究大会が行われました。
みんなあつまれ にこにこ きらきら 「なかよし学習」
〜人とのふれあいを大切にし、ともに学び合う
低学年合同「なかよし学習」への取り組み〜
という研究主題で「つくろう! わたしたちのあそび」の授業研究会が行われました。
にんじゃしゅぎょう、はっぱあて、いろんなせかいをたんけん、スターランドなど子どもたちが考えた楽しい遊びが紹介され、遊びに酔いました。
研究会では活発な話し合いが行われ、指導主事の先生から、生活科4つの目『基本の目 広い目 長い目 温かい目』を教えていただきました。
午後からは、4つのコースに分かれ、研修しました。
あか松庵コース
あか松庵という曲がり屋で、鮎の塩焼きをしたり、講師の先生から、食についてのお話をしていただいたりしました。
もみじがりコース
県内一の太さを誇るオブ山の大杉を目指して、川口渓谷を登山しました。
文化財コース
高さ270センチメートルの道祖神、鈴木空如の模写絵など、太田町のすばらしい文化財を見学しました。
手作りコース
地元の方々より、漬物やおやきの作り方を教えていただいたり、ごちそうになったりしました。
地元の自然にふれたり、人々と交流したりすることにより、視野も広まり、明日への糧となりました。
☆平成15年度夏期研修会より
8月4日(月)大曲市フォーシーズンにて、「暑い夏 明日の生活科に心ふくらませよう」をテーマに生活科夏季研修会が行われ、会員約40名が参加しました。
講演会では、本研究会に長年ご指導をくださり日本生活科・総合的学習教育学会常任理事で現在、秋田大学教育文化学部附属小学校副校長の濱田純先生から、「子育てにおける生活科の役割〜子どもを巡る問題と家庭・学校における子育ての難しさと楽しさ〜」と題して、生活科の教育活動(体験・思考中心型の教育)が現在の子供たちの成長にいかに大きな役割を果たしているかについて教えて頂きました。
快適で便利な文化の中で育つ今の子どもたちには、体力の低下、疲れやすい、耐性の欠如などの特徴が見られ、学級崩壊、不登校、自殺、少年犯罪などのさまざまな問題が発生しており、濱田先生は、このような子どもの変化の背景に、家庭の変化、社会の変化があることを資料を提示されお話しくださいました。
濱田先生は、幅広い校種(養護学校、幼稚園、小学校)での教師経験をお持ちで、さまざまな子どもたちの成長過程をご覧になりながら、「学習への意欲は、いつどのようにして育つのか」ということを考えてこられたそうです。胎児教育、大脳生理学、教育心理学などのさまざまな研究報告や事例をふまえ、子どもには乳幼児から青年期に至る発達の道筋の中で、その時期その時期に育つものがあり、「学習への意欲」は、就学期以前の乳幼児期の体験に深く根ざしており、豊かな体験と愛情ある子育てが必要であることを濱田先生は教えてくださいました。
濱田先生がお話しなさったことで印象深いのは、「直接体験と遊び」の重要性です。「遊び」には、以下のような「身体及び運動機能の発達、知的能力の発達、情緒の発達と安定、技能の発達、想像性の発達、創造性の発達、自立性の発達、社会性の発達」の役割があるそうですが、生活科の「自立への基礎を養うこと」と深く関係していることに気づきます。就学前の幼稚園の教育では、遊びを通して生まれる多くの体験を学習し、そして対応する力を体験的に学習してきているそうです。「たけのこ保育園」(「待ちの子育て」山田桂子1981)では、「動物の世話、畑での野菜作り、自然とのかかわり、年少と年長と遊びのかかわり、雑巾がけ」などの体験活動を重視しており、この園児たちは健康でたくましく育ち、就学期になると意欲的に学習に取り組んでいるという報告をお聞きすると、生活科で行っている体験(思考)中心型の教育括動は、子育てにとって大切な役割を果たしていることがわかりました。
人格の形成では、各発達段階で発達課題を達成することが大事だと言われていますが、濱田先生は、できない子どもを目の前にして、「あるべきものがないという見方でなくて、その子の今の姿をとらえて教えていかなければいけない。」とお話されました。「子ども一人一人の発達過程をふまえて指導しなければ、その子に合った学習、今必要な体験というものは見えてこないのだ。」と先生のお話を伺って、気がつきました。
現代の社会状況において、「生活科は子どもたちにとって命綱である。」と濱田先生は断言されました。先生のお話の中から、「子どもたちのために、生活科をしっかりやらなくては!」と、再認識させられました。
(どんぐり26号より)